デザイン思考のもたらすものとは?基本の概念と実践方法のポイント

「デザイン思考」と聞くと、デザイナー独特の思考と思われるかもしれません。しかし、デザイン思考はデザインの世界だけでなく、ビジネスをはじめ、あらゆる分野で有効な問題解決の技術です。GoogleやAppleでも採用しているほど有用なデザイン思考。その概念や実践方法のポイントについて確認し、日々の仕事に取り入れてみませんか?

デザイン思考とは?

デザイン思考(デザインシンキング)とは、これから開発する商品やサービスを利用するユーザーのことを徹底的に考え、潜在的なニーズを見出し、問題を解決した商品やサービス提供に結び付ける考え方です。

ユーザーが本来持っているニーズを徹底的に掘り下げていく中で、従来は見えていなかったニーズを発見し、そのニーズに最適な問題解決方法を見つけ出すことが重要です。ターゲットユーザーの有する課題を徹底的に掘り下げていくことで、ユーザーさえ意識できていない、「良い意味で期待を裏切る」商品やサービスを提供することができます。

「広く浅く」から「狭く深く」型の消費へ

従来の商品やサービス開発では、マーケティング調査を行い、より多くの人のニーズを満たすような商品やサービスを大量生産して多くの人に届けてきました。最大公約数的な問題解決でも十分間に合っていたのです。

また、供給側の都合で大量生産しやすい商品が供給され、消費者側が「商品やサービスに合わせる」という形で消費するという形が多く見られました。標準サイズばかりの衣類、2人以上でしか宿泊できない旅館のような宿泊施設はその一例です。

しかし、インターネットが普及し、一般人でも情報を多く手に入れることができるようになると、もともと多様だった潜在的なニーズが表面化し、人々はよりきめ細かな条件で商品やサービスを選ぶようになっています。

デザイン思考は、ターゲットユーザーをはっきり定めて、そのユーザー層のニーズをより深く追求し、大きな満足感を得られる問題解決を見出します。まさに、今の時代にマッチした問題解決の技術と言えます。

デザイン思考を進める5つのプロセス

デザイン思考を進めるプロセスとして、ハーバード大学デザイン研究所のハッソ・プラットナー教授の『デザイン思考の5段階』を紹介します。

1.共感 (Empathies)

2.定義 (Define)

3.概念化 (Ideate)

4.試作 (Prototype)

5.テスト (Test)

これらのプロセスは、この順番通りに進めることにこだわらず、相互的に関係しながら進めていくことが大きな特徴です。そのことを念頭に置きつつ、各プロセスを見ていきましょう。

共感(Empathies)

ユーザーの行動について、どうしてそうなるのかを理解し、心の動きに寄り添い、何が問題なのかを見つけるプロセスです。

この段階で、ターゲットユーザーはある程度限定しなくてはなりません。年齢層、職業、家族構成、性格などその他商品やサービスをメインで利用するターゲットユーザーを決めます。そのターゲットユーザーが抱えている問題が何なのかを、とにかく何でも気付いたことを列挙して検討の材料とします。

このとき、できればターゲット層に該当する人に直接取材をすると、より大きな気づきが得られます。ターゲットユーザーにアンケートを取っても良いでしょう。ユーザーの抱えている問題に対して共感して、問題となりそうな部分を些細な部分も見逃さずに拾い上げることができれば、このプロセスは成功です。

定義 (Define)

共感の段階で拾い上げたターゲットユーザーのニーズや問題点をはっきりと定義するとともに、自身がどの部分を検討するべきかをはっきりさせるプロセスです。このプロセスは、デザイン思考の肝とも言えます。

このプロセスで、問題の本質は何かを見極めていきます。目に見えて出てきたターゲットユーザーの顕在化したニーズを掘り下げていき、ユーザーも気付いていない潜在的なニーズを探り、時には問題の再定義をすることも多々あるでしょう。

概念化 (Ideate)

定義の段階で抽出した問題点について、論理的に仮説を立て、新しい解決方法となるアイデアを見つけ出していくプロセスです。アイデアはひとつとは限りません。さまざまなアプローチ方法で複数の解決方法を仮定した後は、解決方法を取り込んだ商品やサービスの試作とテストに入ります。

試作 (Prototype)

問題に対する解決方法を概念化した後は、商品やサービスのプロトタイピングを作り、問題の解決を図ります。概念化で問題解決のアイデアが湧いたら、すぐに施策をすることで課題解決のスピードアップも可能です。試作段階を何回も繰り返すことで、いきなり商品を売り出して失敗するリスクを下げられます。

ひとつの問題解決方法に対して複数の試作品ができることもあるでしょう。問題解決方法を複数見出している場合は、それぞれに対して試作をすることもあります。試作をすることによって単なるアイデアが具体化して、多くの人に伝わりやすくなります。さらに問題解決に対する深いアイデアが浮かぶこともあるなど、試作も多くの効用があるプロセスです

テスト (Test)

試作の検証が、テストのプロセスです。テストをすることで、問題に対する解決方法が正解だったのかどうかが初めて証明できます。開発した商品やサービスを実際にターゲットユーザーに使ってもらってテストをするのが一番分かりやすい検証方法です。旧商品がある場合は、試作品と両方をターゲットユーザーに使ってもらって検証しても良いでしょう。

検証項目には優先度をつけることも重要です。何度も試作とテストを繰り返す場合、検証項目があまりにも多いと大変ですが、優先順位がついていれば検証項目を絞ることもできます。

また、テストの段階では、ターゲットユーザーだけではなく、あえてターゲットユーザーから大きくな離れたユーザーのテストも有用なときがあります。例えば、30代がターゲット層の場合、子どもや高齢者にもテストしてもらうことで、実は30代では自覚していなかった問題が浮かび上がることもあります。

デザイン思考がもたらすもの

デザイン思考により、イノベーションを起こすような課題解決方法を発見することが可能となるでしょう。本質的な課題解決方法を見出すには、デザイン思考を何度か繰り返して表面上に見えている問題を深堀りしてより本質的な問題を見出すよう、論理的な思考の訓練を繰り返していく必要があります。何度も練習することでデザイン思考の本質を理解し、身に付けていくことができるのです。

デザイン思考の本質は問題の再定義

ターゲットユーザーの抱える本質的な課題をこれまでにない手法で解決するには、表出している課題の「リフレーミング」、つまり問題の再定義ができるかどうかにかかっています。問題の再定義とそこから出た発明品は、探せばいくらでも見つけられます。

例えば、世界初のカップ麺であるカップヌードルもそのひとつです。インスタントラーメンを割ってマグカップに入れ、お湯を注いで食べている外国人を見て、インスタントラーメンの生みの親である安藤百福氏は、いつでもどこでもお湯さえあれば食べられるカップヌードルを開発しました。

日本の家庭では当たり前のようにある丼が外国では当たり前の食器ではない、ということに気付いたのです。この発明のおかげで、カップヌードルは世界中どこでも食べられるインスタント食品となりました。

すでに世に出ている商品の場合は、ユーザーが実際に使ってどのような反応を見せているかを観察するのも有効な手法です。そこからユーザーも気付いていない潜在的なニーズに気付くことができれば、問題の再定義もしやすくなります。

デザイン思考を進めるうえでの注意点

デザイン思考を進める上で「その問題解決は供給側の都合になってしまっていないか」ということに注意していきましょう。ターゲットユーザーへの理解ができているのに、供給側の都合でユーザー側の問題解決が中途半端になってしまうと、その商品はターゲットユーザーに受け入れてもらえない可能性が高くなります。

すでに問題解決の方法がある程度決まってしまっている場合は、特に注意しなければなりません。せっかくターゲットユーザーのニーズを分析して見えている課題なのに、そちらを無視して現在見出している問題解決手法にこだわってしまう傾向があるためです。

あくまでもターゲットユーザーの問題を以下に気持ちよく解決できるか、これまで気付いていなかった不便さを取り除けるか、という点を忘れないことが重要です。時には、現在見出している問題解決方法をいったん忘れて、まっさらな状態でユーザーの抱える問題の解決方法を検討し直す勇気も必要でしょう。

GoogoleやAppleもデザイン思考を採用

デザイン思考は、問題解決の技術として、何度も実際に練習することで身に付けられます。実際に知識として知っているだけではなく、何度も自分で経験を積み重ねることが重要です。GoogleやAppleも、社内でデザイン思考を採用しています。AppleのiPodは、ユーザーのニーズを徹底的に分析することで生まれた画期的な商品です。

慣れないうちは、デザイン思考は難しいと考えるかもしれませんが、実践すればするほど、その有用性が理解できます。どのような場面でも使え、イノベーションを生み出せる可能性を秘めたデザイン思考。ぜひ日々の仕事にも取り入れてみてください。


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